Nordic BLE SoC 開発はどう変わった? -nRF52・nRF53・nRF54に見る開発スタイルの進化-


Bluetooth Low Energy(BLE)機器の開発で広く採用されているNordic SemiconductorのSoCですが、近年はチップ性能だけでなく開発スタイルそのものが大きく変化しています。

特に大きな変化が起きているのは、

  • nRF52世代

  • nRF53世代

  • nRF54世代

の3つの世代です。従来の「SDK + SoftDevice」というシンプルな構成から、現在は「RTOSベースの開発」へと移行しています。本記事では、Nordic BLE開発の変化をチップ性能ではなく「開発スタイル」という視点から整理します。

なぜNordicはSoftDevice中心の開発を変えたのか

まず最初に押さえておきたいポイントがあります。それは、Nordicの開発環境が変化した理由です。

従来のSoftDeviceは

  • BLEスタックをバイナリで提供

  • シンプルで安定した開発環境                 という特徴がありました。

 

しかしIoT機器の進化により、

  • マルチプロトコル通信

  • 複雑なアプリケーション

  • セキュリティ機能

  • マルチコアSoC                               といった要求が増えてきました。

その結果、Nordicは、

SoftDevice中心の開発モデルからRTOSベースの開発環境へ

移行することになりました。


nRF52世代:SDK + SoftDeviceというシンプルな構成

 
 

nRF52世代では、主に次の開発構成が使用されていました。

  • nRF5 SDK

  • SoftDevice

ソフトウェア構造は次のようになります。

 
Application

SoftDevice (BLE stack)

Hardware
 

SoftDeviceとは、Nordicが提供するBluetoothプロトコルスタックのバイナリライブラリです。

アプリケーションはSoftDeviceのAPIを通じてBluetooth機能を利用します。

この構成の特徴は非常にシンプルです。

メリット

  • BLE開発が容易

  • RTOS不要

  • シンプルなソフトウェア構造

そのため、

  • BLEセンサー

  • ビーコン

  • シンプルなIoT機器

など多くの機器で採用されてきました。

一方で、SoftDeviceは内部実装が公開されていないため、

  • カスタマイズが難しい

  • 内部挙動の解析が難しい

といった制約もありました。


nRF53世代:RTOSベースの開発へ

nRF53世代では、開発環境が大きく変化しました。

主に使用されるのは

  • nRF Connect SDK

  • Zephyr RTOS

です。

ソフトウェア構造は次のようになります。

 
Application

Zephyr RTOS

Bluetooth Host

Controller

Hardware
 

さらにnRF53シリーズでは、SoC自体も

  • Application core

  • Network core

というデュアルコア構成になっています。Bluetooth通信は主にNetwork coreで処理され、アプリケーションはApplication coreで動作します。

この構造により、

メリット

  • マルチタスク管理が容易

  • 複雑なアプリケーションに対応

  • Thread / Matterなどマルチプロトコル対応

といった特徴が生まれました。つまりnRF53世代では

BLE MCU → IoTプラットフォームへと進化したと言えます。


nRF54世代:RTOSまたはBare Metalという新しい選択肢

さらに新しい世代であるnRF54シリーズでは、開発スタイルに新しい選択肢が加わりました。

基本的な開発環境は引き続き

  • nRF Connect SDK

  • Zephyr RTOS

ですが、用途によっては「Bare Metal開発」も選択できる(nRF52時代のSoftDeviceに近い感覚で開発できる)設計になっています。

つまり

 
RTOSベース開発
または
Bare Metal開発
 

のどちらも選択可能です。

この設計の背景には、nRF54が想定する用途の広さがあります。

nRF54シリーズは

  • 超低消費電力機器

  • 高性能IoTデバイス

  • AI / DSP処理

など幅広い用途を想定しています。

そのため、

  • RTOSで開発効率を重視する

  • Bare Metalで消費電力やリアルタイム性能を最適化する

といった柔軟な開発スタイルが可能になっています。


Nordic BLE開発の進化まとめ

世代ごとの開発スタイルを整理すると次のようになります。

世代 主な開発スタイル
nRF52 SDK + SoftDevice
nRF53 RTOSベース開発
nRF54 RTOS または Bare Metal

つまりNordicのBLE開発はシンプルなBLE MCUから柔軟なIoTプラットフォームへ進化していると言えます。


まとめ

Nordic SoCを選定する際には、

  • CPU性能

  • メモリ容量

  • 消費電力

といったハードウェア仕様だけでなく、どの開発スタイルが適しているかという視点も重要です。

例えば、

  • シンプルなBLE機器

  • センサーやビーコン

では従来のシンプルな構成が適している場合もあります。

一方、

  • 複雑なIoTデバイス

  • マルチプロトコル機器

ではRTOSベースの新しいアーキテクチャが有利になります。用途に応じて適切な開発環境を選ぶことが、効率的な製品開発につながります。

 

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