Zephyrを広げるRaytacの力 ― 小さなモジュールが生む大きな未来

*本記事はRaytac社のファームウェア開発副マネージャー Stanley Huang 氏(MSc)執筆分の翻訳となります。

【Stanley Huang, 新北市】

オープンソースのプラットフォームである Zephyr RTOS の話になると、多くの人がすぐにST Micro、NXP、Nordicといった大手チップメーカーを思い浮かべます。
しかし私にとって、Zephyr が開発者コミュニティの間で本当に有名になった理由は、実際に手に取れるモジュール ― すぐに接続して使えるハードウェア ― にあると思います。そうした観点では、Raytacは過小評価されているものの、このエコシステムにおける非常に重要な貢献者の一つです。


RaytacモジュールがZephyrをより身近にする

私たちはチップベンダーではなく、Nordicチップセットをベースとした高品質で世界的に認証を取得したモジュール、特にBluetoothやWi-Fiモジュールの製造を専門としています。
代表的な製品には AN7002Q、AN54LQ、AN54LV、MDBT53、MDBT50Q、MDBT42Q などがあります。

これらのモジュールはすでに地域ごとの無線規制認証(FCC、IC、CE、KCなど)および最新のBluetooth規格に準拠しており、開発者に「プラグアンドプレイ」かつ「量産対応可能」という安心感を提供します。
そのため、RaytacのモジュールはZephyr開発者にとってBLE機能をテストする最も手軽なプラットフォームのひとつになっています。

私が初めてBLEペリフェラルプロジェクトでZephyrを使った際には、Raytacの MDBT50Q-DB-40 開発ボード を組み合わせました。
west build -b nrf52840dk_nrf52840 というシンプルなビルドを実行し、J-Link または nRF Connect for Desktop でファームウェアを書き込むだけで、スマートフォンにBLEビーコンがすぐに表示されました。
クリーンでシンプル、無駄がなく、開発者に優しい ― これがRaytacのスタイルです。


モジュールは製品開発で欠かせない役割を果たす

「Raytacは単にモジュールを作っているだけで、真のコアはNordicのSoCだ」という人もいるでしょう。
しかし私の考えでは、オープンソースシステムのZephyrにおいて最も貢献するのは、まずプロジェクトを動かすためのハードウェアです。

RaytacのZephyr対応開発キットは、手半田付けや規制認証、アンテナ設計といった面倒な作業を不要にし、エンジニアがZephyrを用いたアプリケーション開発に集中できるようにします。
開発者はRaytacのキット上で、ZephyrのBLEペリフェラル、セントラル、GATT、HCIといったサンプルを直接実行可能であり、ワンストップのハードウェアソリューションとして利用できます。
このように、RaytacはZephyrの使いやすさを大きく前進させてきました。


RaytacはZephyrの応用範囲も広げる

Raytacの多くのモジュールは超小型で、ウェアラブル、スマートセンサー、低消費電力ビーコンなどに理想的です。これらはまさにZephyrが得意とする分野であり、Raytacのモジュールが企業に「夢のデバイス」を実現するための物理的なプラットフォームを提供します。

例えば AN54LV-15 のような小さなモジュールでZephyrを動かすと、トウモロコシの粒より小さいサイズでありながら、フルRTOSを実行し、BLEスタックを管理し、タイマーをトリガーし、I2Cセンサーを駆動し、さらにはクラウド接続まで自律的にこなせることに開発者は驚かされるでしょう。
この組み合わせは、単に開発を容易にするだけではなく、「Raytacのハードウェアで自分のプロジェクトを作れる」という開発者のインスピレーションを引き出します。


Raytacは主役ではないが、常に準備ができている

Zephyrの舞台で主役のスポットライトを浴びるのはNordic、STM、Intelといった企業かもしれません。
しかしRaytacは舞台裏で演技を支える重要な役割を果たしています。

私たちは安定した高品質・低消費電力のプラットフォームを提供し、Zephyrのあらゆるコードが実行できる場所と、あらゆる機能の土台を用意します。
私たちの最大の価値は、開発者がアンテナ設計やRF干渉の懸念を回避できるようにし、Zephyrエコシステムにスムーズに参加できることです。


私たちの製品は、求められる信頼性と期待される効率性を届けます。

ぜひRaytacがZephyrエコシステムをどのように支えているかをご覧いただき、シームレスに統合できる開発キットやモジュールをご確認ください。

お問い合わせ先:

  • 日本代理店㈱フクミ 問い合わせe-mail : lbt_bt@fukumi.co.jp

記事執筆: ファームウェア開発副マネージャー Stanley Huang
編集: ビジネス開発マネージャー Tony Yin

FAQ : MACアドレスの書き方【AN7002Q-DB-5340 WiFi Devkit】

Raytac AN7002Q-P (Wi-Fiモジュール)のOTPメモリにMACアドレスを書き込む方法についてご質問を頂きました。この記事ではAN7002Q-nRF5340デモボード(AN7002Q-DB-5340)へのMACアドレスの書き込み方について説明いたします。

「DevKitのAN7002Q-DB-5340には既存のWi-Fi MACアドレスがありますか?」

続きを読む “FAQ : MACアドレスの書き方【AN7002Q-DB-5340 WiFi Devkit】”

Keep Out Area(キープアウトエリア)のについて

Raytacでは基板設計時においてコンポーネント配置や配線を避けるべき箇所を「Keep Out Area」と呼んで各品番毎に公表しております。

今回はKeep Out Areaがなぜ必要なのか、ちょっと掘り下げてみたいと思います。

続きを読む “Keep Out Area(キープアウトエリア)のについて”

Nordic Connect SDK(NCS)を使用したnRF5340への書き込み方法

*ハードウェアのセットアップに関しては以前の記事「MDBT53/53V Demo Board(nRF5340)設定方法」を参照してください。

 

導入:ネットワークコアとアプリケーションコア(nRF5340は2つのプログラマブルArm® Cortex®-M33プロセッサが搭載されています)それぞれの書き込み可能なzephyr.hexファイルが準備出来ている状態で、MDBT53/53V nRF5340 BLEモジュールに書き込んでみたいと思います。

続きを読む “Nordic Connect SDK(NCS)を使用したnRF5340への書き込み方法”

MDBT53 / 53V Demo Board (nRF5340) 設定方法

ArmCortex-M33を2機搭載したマルチコアシステムオンチップ(SoC)Nordic nRF5340をベースとしたBLEモジュール MDBT53-1M (MDBT53-P1M / MDBT53-U1M) 及び MDBT53V-1M (MDBT53V-P1M)の評価ボードのセットアップに関する簡易説明となります。

nRF5340搭載 評価ボード

MDBT53-DB-40 / MDBT53V-DB-40

続きを読む “MDBT53 / 53V Demo Board (nRF5340) 設定方法”

Nordic nRF5340 Raytac BLEモジュール MDBT53 / MDBT53Vリリース

Nordic nRF5340は業界初の2つの完全プログラマブルArm® Cortex®-M33プロセッサを搭載したSoCとなります。この度、RaytacよりnRF5340を搭載したBLEモジュールMDBT53シリーズおよびMDBT53Vシリーズの量産準備が整いましたのでご報告いたします。

続きを読む “Nordic nRF5340 Raytac BLEモジュール MDBT53 / MDBT53Vリリース”

Raytac Bluetooth® Low Energy モジュールリードタイム【情報更新:2022/05/24】

昨今の半導体不足によりBluetooth® Low Energyモジュールも例外ではなく、殆どのサプライヤーの回答は50週を超える状況が続いているかと思われます。

Nordic Semiconductor が推奨する3rd party supplier としてRaytac(台湾)は以下のように現状のリードタイム(参考程度)を更新いたしました。

*2022/05/24現在の情報です。発注のタイミング等により実納期は前後いたします。

*Raytacは約10カ月前からの先行発注により、比較的他社様より短いリードタイムでご提供できております。

*弊社に少量ですが在庫がある場合があります。お問い合わせください。

続きを読む “Raytac Bluetooth® Low Energy モジュールリードタイム【情報更新:2022/05/24】”