ウェアラブルデバイスとバッテリーレスの現状について


ウェアラブルデバイスにおいての一番の技術的な関心事は
ユーザーにとって「重い」「かさばる」と思わせない為に、電力をどの様に確保するか?
かと思われます。
電池業界においても確かに技術は進み、より小さくより効率良い物が開発されてますが、
ウェアラブル業界においてはバッテリーレスの製品が開発されつつあるのが現状です。
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■エネルギーハーベスト
ウェアラブルデバイス業界においてエネルギーハーベストの概念は古くからあり、
調査も続けられてきました。(どの様にエネルギーを獲得して、どれだけロスして
電力に変換できるか。)
ただウェアラブルデバイスにおいてはここ最近において実用的だといえる3つのカテゴリーが
挙げられると言えます。
それは、ソーラー、人、無線電波によるものです。

 

■ソーラー
ソーラーパワーは光電池を使用し、光子(フォトン)をエネルギーに変換します。
技術的には昔より知られていますが、最近特に実用的になってきている分野と言えます。
太陽電池はより効率的に発電できるようになり、さらにウェアラブル業界において
より重要な要素である「透明度」において技術が進歩しています。
例えば、透明度はスマートウォッチやフィットネストラッカーにおいて
ディスプレイグラスが透明の太陽電池になり得るという事です。
これによってシームレスで目に見えない電源となり、
現状の電池においては一番の候補になり得るポジションにいます。

もちろんソーラー発電の一番の問題は制御不能な天候に左右するという事です!
十分な太陽光の元で稼働できるデバイスはたくさんあると思われますが、
曇りなど十分な光がない状況では、発電量は5~10%ぐらい落ちることが懸念されます。

 

■人
人が発電することもウェアラブル業界において実現性が日々増してきていると言えます。
ピエゾ(圧電素子)は押し込んだり、曲げたりする行為が発電につながります。
UKのSouthampton universityの研究者は靴のインソールにピエゾ素子を組み込み、
ユーザーが歩くたびに発電する製品を作り出しました。
この技術の問題点は、ユーザーの動作が予測できないところにありますが、
フィットネストラッカーのようにユーザーが動くときだけ機能が必要とするデバイスには
有効な手段と言えます。

ピエゾデバイスの最大の弱点は、アプリケーションによっては耐久性に欠ける可能性が
あります。

 

■無線電波
RFIDタグは送信機からの無線電波によってエネルギーを発生させ(電磁誘導方式)
一部の反射する電波にデータ乗せて送信される技術です。
(他に電波法式でエネルギーを発生させる方法もある)
主問題はスマートフォンなどが送信機の役目にならなければいけないという事です。
また、人体への影響について調査が続けられていますが、
現状で採用されているRFIDタグは国際的な規格内の制限で使用されているため、
心配はないと考えられています。

また、昨今注目されているのがWi-Fi、携帯電話、放送用電波等が浪費している無線電波の
エネルギーを電源として活用するコンセプトで、Freevoltが有名かと思います。
既にワシントン大学の研究チームは同技術を採用した完全に電源不要のセンサーやチップの
開発に成功しています。

 

■新素材
新素材の開発も注目しなければいけません。
グラフェン(graphene)は炭素原子とその結合からできた六角形の格子構造を持った物質です。
グラフェンの特徴は非常に強い物質で、平面内ではダイヤモンドより強く、
引っ張り強度においては世界一と言われていますが、最も注目すべきは
熱伝導と電気の伝導度が優秀だという事です。

グラフェンを使用することで、フレキシブルなデバイスを作ることも可能ですし、
先の特徴の様に効率が良い為、より小さい電力でデバイスを駆動することが可能になります。

 

それでは、現状でバッテリーフリーのウェアラブルデバイスにおいて
一番適しているアプリケーションは何でしょうか?
それは、小さなデータによる測定やコミュニケーションを時折必要とするものと言えます。

例えば、簡易なソーラーパワーを積んだセンサーで日光の強さを測定し、日焼けの危険度を
ユーザーに教えるアプリケーションや、靴に積んだ圧電素子発電によるデバイスで、
歩数測定や位置情報をスマートフォンに送るアプリケーションなどかと思います。

また実例としてNASAやシルクドソレイユが採用している疲労を測定するスマート衣服等も
現状では十分な発電は難しいですが、着ている人の動作による発電やソーラー発電などと
組み合わせれば実現可能と言えます。

ウェアラブルデバイスの市場は常に成長しており、2015年においてはUSD20bn規模と言われ、
ここ10年以内にUSD70bn規模までに少なくとも成長すると予測されています。
また一方で、バッテリーレスデバイスはユーザーにとって、電池残量のストレスから解放し、
また充電や電池を入れ替える作業を無くすため、非常に便利な要素と言えます。
超低電力チップやより効率的な発電技術が開発されれば、採用される製品が増え
また新しい世界を作り出すことが期待されます。
我々が見ている現在はまだ「氷山の一角」という日が近い将来期待されます。

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